税理士との付き合い方 ― 薬局経営を安定させるためのパートナーシップ
- ichikawa53
- 10月6日
- 読了時間: 4分

薬局を経営するうえで、税理士は「決算・申告の代理人」というだけでなく、経営の伴走者として重要な役割を担います。しかし実際には、「何をどこまで相談すればいいのか」「どう付き合えばより良いサポートが受けられるのか」と悩む経営者も多いのではないでしょうか。ここでは、薬局経営者が押さえておくべき「税理士との上手な付き合い方」のポイントを整理します。
1.税理士は「申告業務」だけではない
税理士の業務と聞くと「決算・税務申告書の作成」を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、薬局経営において税理士の役割はもっと広く、
資金繰りや融資のサポート
設備投資や新店舗展開の際のシミュレーション
人件費や報酬設計のアドバイス
M&Aや事業承継のコンサルティングなど、経営全般に及びます。特に薬局業界は調剤報酬改定やインボイス制度など、制度変更の影響を大きく受ける業界です。税理士と密に連携することで、先手を打った対応が可能になります。
2.「定期的な情報共有」で経営の透明性を高める
税理士との関係がうまくいかない原因の多くは、情報共有の不足です。例えば、月次の売上推移や在宅件数、OTC販売の比率など、経営の実態を正確に伝えることで、税理士はより的確なアドバイスができます。また、設備投資や採用計画、M&Aの相談などは「決める前に」税理士に話しておくことが大切です。後から相談すると税務的に不利になってしまうケースも少なくありません。
3.「資料提出のルール」を整備しておく
税理士事務所とのやり取りで一番多いのが、領収書や請求書など資料の提出に関することです。これが遅れると、決算・申告の遅延や経営数値の把握遅れにつながります。クラウド会計やAI-OCRなどを活用すれば、日々の入力や資料提出を自動化でき、税理士との連携が格段にスムーズになります。「毎月○日までに領収書をアップロードする」といったルールを明確に決めておくと、双方にとって業務負担が減ります。
4.「薬局業界に詳しい税理士」を選ぶメリット
薬局は医療機関との連携・調剤報酬・在宅医療・M&Aなど、一般業種とは異なる特殊性を持っています。そのため、薬局業界に精通した税理士を選ぶことで、より実態に即したアドバイスが得られます。たとえば、薬局特有の課税・非課税の線引き、設備投資や薬剤師採用のための補助金、地域連携薬局・専門医療機関連携薬局の指定による経営インパクトなど、薬局専門の税理士であれば現場感覚を踏まえた提案が可能です。
5.「費用」ではなく「価値」で見る
税理士報酬を「コスト」としてのみ捉えてしまうと、どうしても値下げ競争の視点になってしまいます。しかし、税理士との関係は「経営を良くするための投資」と考える方が長期的にはプラスです。たとえば、税理士の提案により節税・補助金活用・資金繰り改善などが実現すれば、その効果は報酬を上回ることもあります。経営の伴走者としてどれだけの「価値」を提供しているかを見極めることが大切です。
6.「経営者自身の考え」を明確にして伝える
税理士に相談する際は、「まだ決まっていないけど方向性を考えたい」という段階からでも構いません。むしろ早い段階で方向性を共有することで、税務・財務面のシミュレーションが可能になり、意思決定の精度が上がります。また、経営者自身が「何を優先したいか」(利益・地域貢献・人材確保など)を整理しておくことで、税理士はよりオーダーメイドな提案ができます。
7.まとめ ― 「相談しやすさ」が成功のカギ
薬局経営は制度・人口動態・競合環境の変化に大きく左右されるため、常に柔軟な経営判断が求められます。その判断を支えるのが税理士です。上手な付き合い方のポイントは、
定期的な情報共有
ルール化された資料提出
専門性を持つ税理士とのパートナーシップ
コストではなく価値で評価
することにあります。
薬局専門税理士として、私も経営者の皆さまと一緒に数字を読み解き、次の一手を考える伴走者でありたいと考えています。


