店舗PLを従業員に見せるべきか?
- 1 日前
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X(旧;twitter)で「店舗PLを従業員に見せるか?」というアンケートを取っていらっしゃる方を見かけました。とても興味深いテーマだったので、今回はこの点について、私自身のスタンスをまとめてみたいと思います。
結論から言えば、店舗PLを従業員に開示する経営者は実際にいます。
特に、複数店舗を展開している薬局では、管理薬剤師同士の打ち合わせや目標管理の場面で活用している印象があります。一方で、1店舗の運営であれば、そこまで細かく開示する意義は相対的に小さいかもしれません。
私自身、これまでいくつかの事例を見てきましたが、数字を把握することで行動が変わる人は一定数います。薬局業界は理系の専門職ということもあり、数字に対するアレルギーが比較的少ない業界だと感じています。そうした土壌があるからこそ、店舗PLの開示がうまく機能しやすい面もあるのでしょう。
また、売上と粗利については、調べようと思えばレセコンからある程度見えてしまうものです。そう考えると、売上情報を過度に隠す必要はあまりないとも思っています。むしろ、優秀な人材であれば、将来的な独立や経営への関心から、自ら数字を見ようとしていることもあるでしょう。
私が行っている財務コンサルティングでも基本にしているのは、自分たちの現在地を数字で把握することの重要性です。自社が赤字体質なのか、順調に利益が出ているのか。その現状認識があるかないかで、現場から出てくる改善案や行動は大きく変わります。数字を知らずに経営改善を語るのは、地図を持たずに目的地へ向かうようなものです。
そのため、私は店舗PLの開示には比較的賛成の立場です。ただし、そのままの生データを渡せばよいとは考えていません。開示するのであれば、現場に伝わる形に加工することが大切だと考えています。
たとえば、まず人件費はマスクした方がよいと考えています。ここは従業員間の不公平感や不要な憶測を生みやすく、トラブルの火種にもなりやすい項目です。
また、本部費や共通経費は店舗PLに載せすぎない方がよいとも思います。現場にとってコントロールできない費用まで含めて赤字に見えてしまうと、「自分たちの努力ではどうにもならない」という感覚につながり、かえってやる気を削いでしまうことがあるからです。
さらに、開示するのであれば、単に損益だけを見せるのではなく、予算や目標との比較、進捗管理まで含めて設計することが望ましいでしょう。あくまで目標管理の一環として使うべきであって、責任追及の材料にしてしまうと逆効果です。
そもそも、生のPLを渡したとしても、経営者の意図どおりに解釈してくれる人ばかりではありません。PLは言ってしまえば簿記の世界の資料です。経営に慣れていない現場スタッフには、伝わりにくい部分も多いはずです。だからこそ、現場に伝えるべきなのは「簿記として正しい資料」だけではなく、現場が行動に結びつけやすい形に翻訳された数字であるべきだと思います。
では、こうした店舗PLを適切に出すためには何が必要でしょうか。
私は、店舗ごとのお金の流れをできるだけ分けておくことが重要だと考えています。たとえば、銀行口座やクレジットカードなど、店舗に属するものは極力分けることです。ここが曖昧だと、仕訳記帳する側でも店舗別の判別が非常に難しくなります。後から修正しようとするとかなりの手間がかかりますし、請求書が一本化されているようなケースでは、厳密な按分が難しいことも少なくありません。
なお、当事務所では、多店舗展開されている顧問先については、基本的に自社で記帳をされることをお勧めしております。理由はシンプルで、会計を経営基盤の一つとして考えるのであれば、自社である程度数字を作れる体制を持つこと自体に大きな意味があるからです。会計は、単なる申告のための作業ではありません。経営判断のための土台です。その土台づくりには、一定のコストと意識が必要です。
これから多店舗展開を目指すのであれば、会計を作る段階でも、開示する段階でも、人に見せられるクリーンなお金の流れを意識しておくことが大切だと感じております。数字を隠す経営ではなく、必要な形に整えて共有できる経営へ。その積み重ねが、強い組織づくりにつながっていくのではないでしょうか。


