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正しい財務は予防医療と一緒――薬局経営を守る「先手の数字管理」

  • 2 日前
  • 読了時間: 5分

薬局の財務は、後回しになっていませんか?

薬局を経営されている方とお話していると、「売上は伸びているから、まあ大丈夫だろう」とおっしゃる方が少なくありません。確かに、患者さんが増えて、在宅の件数も上がって、売上が順調に伸びているなら安心感があるのは

当然です。

でも、少し立ち止まって考えてみてください。

売上が伸びているとき、あなたは財務のことをじっくり考えていましたか? 人を採用しようとしたとき、出店を検討したとき、「現金はちゃんと足りているだろうか」と数字を見て確認しましたか?

多くの経営者が財務と向き合うのは、「何か困ったことが起きてから」です。資金繰りが苦しくなってから、銀行に相談に行ってから、はじめて数字と真剣に向き合う。でも実は、そのタイミングでは「すでに少し遅い」ことがあるのです。

今回は、財務管理の考え方を、薬局経営者の皆さんにとって身近な「予防医療」になぞらえてお伝えしたいと思います。


財務も予防医療も、「なってから」では遅いことがある

予防医療とは何でしょうか。病気になってから治療するのではなく、病気になる前に体の状態を把握し、リスクを減らしておく考え方です。定期的な健康診断、生活習慣の見直し、早期のワクチン接種――いずれも「今は元気だからこそ、先を見て備えておく」という発想です。

財務管理も、まったく同じ構造をしています。

資金繰りが悪化してから対策を考えるのではなく、まだ余裕があるうちに数字を把握し、リスクに備えておく。これが「正しい財務」の姿です。

ひとつ、よく誤解されていることをお伝えします。「売上が伸びている」と「現金が十分にある」は、実はイコールではありません。

在宅医療を拡大すると、調剤報酬の入金は数か月後になります。人を新たに雇えば、給与の支払いは毎月発生します。先行投資として現金が出ていくのに、売上の回収は後からついてくる――この「時間のズレ」が、薬局経営における資金繰りの落とし穴です。

業績は上向いているのに、なぜか手元のお金が減っていく。そういう状況が、成長期の薬局では起きやすいのです。


実際にあった相談事例――売上好調でも、現金の不安はやってくる

少し前に、こんなご相談をいただきました。

もともと門前薬局として地域に根ざしていた、いわゆるパパママ薬局です。社長ご自身が在宅医療に積極的に取り組み、患者さんとの信頼関係を丁寧に築いてきた結果、在宅の件数が増え、売上も順調に伸びていました。

「さらに在宅を広げていきたい。そのためにも、旧知の薬剤師に声をかけて採用しようと思っている」

そう話してくださったのは、ちょうど決算が終わったころのことでした。事業の方向性は明確で、採用の目処もついている。でも、いざ動こうとしたときに「資金繰りが本当に回るだろうか」という不安がよぎったそうです。

そこで、私は収支の予想と資金繰りの予想を一緒に作成して、数字でご説明しました。

人を雇用することで毎月の人件費が増え、支出が先に増える。在宅の売上は伸びる見込みだが、入金までにタイムラグがある。そのため、業績自体は上向いていても、一時的に現金残高が減る局面を乗り越えなければならない。

数字にしてみると、「何となく不安」だったものが「いつ、どのくらい現金が減るか」という具体的な見通しに変わります。漠然とした不安は、数字を見ることで初めて「対策できるもの」になるのです。


借入は「苦しいときに頼るもの」ではない

この相談でもうひとつ重要だったのが、借入のタイミングです。

決算直後という、まだ業績が好調な時期でしたので、私は早めの借入を提案しました。「今すぐ現金が必要なわけではないけれど、数か月後の資金繰りを見越して、今のうちに準備しておきましょう」と。

結果として、銀行との交渉はスムーズに進みました。担当者の方も、「数か月先を見据えて、余裕のあるうちに相談に来ている」という姿勢を好意的に受け止めてくれていたようです。無理な資料請求をされることも、想定外に高い金利を提示されることもなく、こちらとしてもかなり強気に交渉することができました。

ここで、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。

銀行は、「本当に困っているとき」に気前よく貸してくれるわけではありません。むしろ逆です。業績が良く、先を見て動いている先に対してこそ、前向きに融資を検討しようとします。

これは銀行が冷たいのではなく、融資とはそういう性質のものだからです。返済の見込みが立つかどうかを判断するのが銀行の仕事ですから、余裕のある状態で相談してくる先のほうが、信頼性が高いと判断されやすい。

「困ってから借りよう」では、条件が厳しくなったり、思うように借りられなかったりすることがあります。借入は「苦しいときの最終手段」ではなく、「余裕があるうちに準備しておく経営の道具」と考えることが大切です。


まとめ――早めに数字を見ることが、経営を守る

予防医療が「病気になってからでは遅いことがある」という前提に立つように、財務管理も「困ってから対応するのでは遅いことがある」という視点が必要です。

在宅医療を広げたい、優秀なスタッフを採用したい、もう一店舗出したい――こうした前向きな経営判断を安心して実行に移すためには、その前に数字を見ておくことが不可欠です。

収支の予想を立てる。資金繰りの流れを確認する。必要であれば借入を早めに準備する。これらは難しいことではありませんが、「後でやろう」と思っていると、気づいたときには手が打ちにくくなっていることがあります。

財務に不安を感じているなら、それは「まだ間に合うサイン」です。売上が伸びているいま、手元の現金の動きを一度しっかり確認してみてください。数字を早めに見ることが、経営を守り、次の一手を安心して踏み出すための、何より確かな準備になります。

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