薬局経営者こそ意識したい、税理士変更のタイミングと選び方
- ichikawa53
- 8月29日
- 読了時間: 4分

調剤薬局を経営していると、日々の調剤業務やスタッフ管理、さらには薬価改定や在宅医療への対応など、経営課題は山のようにあります。その中で見落とされがちなのが「税理士との関係」です。顧問税理士は、単なる決算や申告を代行する存在ではなく、経営の数字をともに見て、将来を支えるパートナーであるべきです。しかし現実には「長年お願いしているから」「紹介されたから」といった理由で付き合い続けているケースが多く、気づけば薬局経営にとって最適ではないサポートを受けていることもあります。では、どんな時に税理士の変更を考えるべきなのでしょうか。
税理士変更を検討すべきタイミング
1. 業界知識の不足を感じた時
薬局経営は、一般の小売業やサービス業と異なり、薬価や調剤報酬に左右されます。薬価改定や診療報酬改定の影響をどう乗り越えるかは、薬局特有の課題です。顧問税理士が医療・薬局業界の知識に乏しく、一般的なアドバイスしか得られない場合、経営判断に活かせる情報が不足してしまいます。
2. 経営相談ができないと感じた時
申告書を作って終わり、という対応しかなく、日常的に資金繰りや人件費設計、投資判断などの相談に乗ってもらえないのであれば、税理士をパートナーと呼ぶのは難しいでしょう。特に薬局は在宅やM&Aなど将来を見据えた戦略が必要です。そうした相談に乗ってもらえない場合は、変更を検討すべきサインです。
【事例①】会うことがない税理士
ある薬局では、年1回の決算時だけ税理士の関与があり、普段は電話やメールでのやりとりのみでした。数年間顧問契約を続けていたものの、実際に税理士と直接顔を合わせたのは契約当初の1回だけ。以後は担当者すら現場に来ず、直接相談する機会がまったくなかったといいます。これでは「一緒に経営を考えるパートナー」とは言えません。
【事例②】担当者がコロコロ変わる税理士事務所
別の薬局では、開業直後に前職の薬局から紹介された税理士に依頼していました。ところが、2年間で担当者が3〜4回も変わり、そのたびに一から説明し直すことに。引き継ぎも不十分で、最後に担当した人は「診療報酬が2か月後に入金される」という業界の基本すら把握していない状況でした。当然ながら経営相談などできるはずもなく、不安ばかりが募ったとのことです。
税理士を変えて成功した事例
一方で、思い切って税理士を変えたことで経営が前進した薬局もあります。
【成功事例】資金繰りが改善し、銀行融資に強くなったケース
ある薬局では、以前の税理士からは「とりあえず節税を」としかアドバイスがなく、結果として決算書の数字が弱くなり、銀行融資を断られていました。そこで薬局業界に詳しい税理士に変更したところ、倒産防止共済や利益の見せ方など、業界特有の財務戦略を組み込んだアドバイスを受けられるようになりました。その結果、キャッシュフローが安定し、数年ぶりに新規出店のための融資をスムーズに受けることができたのです。経営者は「もっと早く変えていれば」と語っています。
税理士選びで意識すべきポイント
では、いざ税理士を選び直す際、どんな点を重視すべきでしょうか。
1. 医療・薬局業界に強いか
一番大切なのは業界特化の知識です。薬局の損益構造や、薬価改定が経営に与える影響、在宅医療への対応、さらには調剤薬局M&Aの実務まで理解している税理士は多くありません。薬局に特化した税理士であれば、他の薬局の事例も踏まえて実践的なアドバイスが受けられます。
2. 経営まで踏み込んだ提案力があるか
単なる「数字の整理役」ではなく、将来の資金繰りや投資、事業承継まで視野に入れた提案ができる税理士は、経営者にとって心強い存在です。顧問料が多少高くても、経営課題を解決してくれる税理士は結果的に利益を生み出します。
3. デジタル対応・情報発信の姿勢
クラウド会計の導入サポートや、業界情報の提供など、新しい仕組みを積極的に取り入れているかも重要です。特に調剤報酬や補助金制度などは情報戦の側面があるため、税理士が常にアンテナを張っているかどうかは、薬局の成長スピードに直結します。
まとめ
税理士を変更することは、大きな決断のように思えるかもしれません。しかし、薬局経営にとって「最適なパートナー」を持つことは、それ以上に価値があります。長年付き合ってきたからといって我慢する必要はありません。今の税理士に物足りなさを感じるのであれば、それは経営が次のステージに進んでいるサインです。
そして、実際に変更したことで資金繰りが改善し、新規出店のチャンスを掴んだ薬局のように、未来を切り開くきっかけとなる場合もあります。
薬局経営を安定させ、将来を見据えるためにも、「税理士変更のタイミング」と「選び方」を意識し、信頼できるパートナーを選び直すことをおすすめします。


