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レセプト請求と入金タイムラグが資金繰りに与える影響

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キャッシュフローを安定させるための銀行活用法や運転資金管理

調剤薬局を経営する上で避けて通れないのが「レセプト請求」と「入金までのタイムラグ」です。薬局の収入の多くは調剤報酬から成り立っていますが、診療報酬は請求してすぐに入金されるわけではなく、通常2か月後に振り込まれます。このタイムラグが資金繰りを難しくし、ときに経営を圧迫する要因となるのです。ここでは、この入金タイムラグが薬局経営にどのような影響を与えるのか、そしてキャッシュフローを安定させるための銀行活用法や運転資金管理のポイントを解説します。


レセプト請求と入金の流れを正しく理解する

調剤報酬は、毎月10日までに前月分を審査支払機関に請求し、審査を経たのち、翌々月の支払日に入金されます。例えば、4月に調剤した分の報酬は6月に入金されるという仕組みです。この2か月のタイムラグがあるため、薬局は「実際には売上が立っているのに現金が入らない」状況に置かれます。特に新規開業や店舗拡大直後は、このタイムラグが大きな負担となりやすいのです。


薬局経営特有の資金繰りポイント

1. 仕入代金の支払いサイトとレセプトの入金

薬局業界では、卸業者への支払いサイトはおおむね2か月後が慣例です。そのため、レセプト入金も2か月後であり、実は「帳尻は合う」構造になっています。ただし、この仕組みを正しく理解していないと、卸との交渉時に不利になりかねません。また、逆に「支払いを3か月サイトに延ばせば資金繰りが楽になる」と短絡的に考えるのは危険です。むしろ財務状況や経営方針に応じて、適切なバランスを取ることが重要です。


2. 人件費や家賃など入金前にでていく経費

資金繰りを難しくする最大の要因は、売上がなくても先に出ていく支出です。人件費や家賃、光熱費といった固定費は待ってくれません。そのため「売上の3か月分は運転資金として用意しておくべき」と言われるのは、まさにこの先払い経費に備えるためです。


3. 個人薬局に特有の源泉徴収

個人事業として薬局を営む場合、社会保険診療報酬支払基金からの入金は約10%が源泉徴収されます。高額な薬剤を扱った月などは、技術料より控除額の方が大きくなり、想定以上に資金が減ることもあります。もっとも、これは前払いの性質を持つ税金なので、最終的に損をするわけではありません。


実際に起きた資金繰りトラブル事例

ある薬局では、事務員の入退社が重なったせいで業務引き継ぎがうまくいかず、レセプト請求が遅れてしまい、数百万円分を請求できなかったという事態が発生しました。幸い資金に余裕があったため翌月に請求し直して乗り切れましたが、もし開業したてで資金がギリギリの状況であれば、支払いが滞り経営危機に直面していた可能性があります。

このように「ほんの少しの事務ミス」が、資金繰りに致命的な影響を与えるのが薬局経営の現実です。日々の業務フローを標準化し、責任の所在を明確にすることも大切なリスク管理のひとつと言えるでしょう。


キャッシュフローを安定させる方法

銀行融資を上手に活用する

資金繰りを安定させるためには、銀行との関係づくりが欠かせません。普段は資金が足りていて借入の必要がないからといって、銀行担当者を遠ざけてしまうのは得策ではありません。むしろ、少額でも借入を行い、定期的に返済を続けることで、銀行に自社の経営状況を知ってもらうことができます。いわゆる“おつきあい”としての借入ですが、これが将来的に大きな投資や緊急の資金需要が発生した際に、スムーズに融資を受けられる下地となります。経営者として、日頃から金融機関に信頼を積み重ねておくことは重要な知恵といえるでしょう。


キャッシュフロー表(資金繰り表)を作る

毎月の入出金を「いつ・いくら入って、いつ・いくら出ていくのか」を見える化することが大切です。仕入代金とレセプト入金のサイクルが揃っているからこそ、逆に人件費や税金などの先払い支出をどう乗り越えるかが資金繰りのカギとなります。


共済制度や内部留保の活用

倒産防止共済などを活用すれば、いざというときに借入が可能です。さらに一定の内部留保を積み上げておくことで、納税や突発的な支出にも耐えられる体制を作ることができます。


まとめ

薬局経営の資金繰りは、単に「レセプト入金が遅いから大変」というだけではありません。実際には、入金サイトと支払いサイトの差が重要で、人件費・家賃・税金など先に出ていく支出が資金繰りを難しくしています。

さらに、レセプト請求の遅れというヒューマンエラーひとつで、数百万円規模の資金不足に直結することもあります。こうした特徴を理解した上で、銀行融資や共済制度を上手に活用し、キャッシュフローをコントロールすることが安定経営への第一歩です。

薬局ならではの資金サイクルを正しく認識し、資金不足に陥らない仕組みを整えていきましょう。

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