薬局における税務調査 ― 実態と備え方
- ichikawa53
- 2025年10月2日
- 読了時間: 3分
更新日:2025年10月6日

税務調査と聞くと、多くの経営者が「いつ来るのか」「何を調べられるのか」と不安に思うものです。
薬局業界は保険調剤が中心であるため、「売上をごまかせないから税務調査は来にくい」という話が都市伝説のように語られることもありますが、実際には調査の対象となるケースは決して少なくありません。本記事では、薬局における税務調査の実態と備え方について整理していきます。
1.税務調査が行われる理由
税務署側から見れば、決算書や申告書だけで会社の実態を完全に把握することはできません。たとえば、
売上が大幅に増えているのに現金残高が極端に減っている
接待交際費や広告宣伝費が急増している
人件費が類似業種と比べて異常に高い
などといった「申告内容と経営実態の不一致」が見えると、裏付けを確認するために調査が入ることがあります。税務調査は「疑ってかかる」というよりも「事実を確認する」ためのプロセスであり、調査官も「現場を見て判断する」必要があるため来訪する、というイメージです。
2.税務調査の流れと期間
一般的な税務調査は、事前通知のうえで1~2日間に分けて行われます。初日は帳簿・領収書・契約書などの確認、二日目に社長や経理担当者へのヒアリングという流れが多いです。社長が2日間拘束されることになるため精神的な負担は小さくありませんが、事前に準備をしておけば大きな問題になることはほとんどありません。
3.薬局ならではの調査リスク
薬局は保険調剤が中心であり、売上をごまかしにくいため「税務調査が来にくい」という都市伝説があります。しかし、実際にはそうとも言い切れません。例えば、
在宅医療に力を入れている薬局
M&Aにより急拡大してきた薬局
事業承継したばかりで経営数字が大きく変化した薬局
などは、標準的な薬局の数値モデルから外れることが多く、税務署から注目される可能性が高まります。特に薬局業界では、調剤報酬改定や地域医療の変化により数字の構造が変わることもあり、その都度「なぜこうなっているのか」を説明できる資料やストーリーを整えておくことが大切です。
4.税理士の立ち会いと事前準備
通常、税務調査には税理士が立ち会います。弊社は全国に顧問先がおりますので、遠方の顧問先であっても、東京から北海道・沖縄まで同行することも珍しくありません。
調査前には税理士と一緒に「チェックポイント」を洗い出し、疑義がありそうな取引については事前に説明資料を作っておくことで、調査がスムーズに進みます。
5.「書面添付制度」の活用で調査リスクを軽減
弊所では、書面添付制度(税理士法第33条の2に基づく添付書面)の活用を推進しています。これは、税理士が申告書に対し一定の調査・確認を行ったうえで「この申告は適正です」という旨の書面を添付する制度です。この書面添付を行うことによって、税務署は調査に入る前にまず税理士へ「意見聴取」を行うことができ、結果として実地調査が省略されるケースもあります。弊社が設定する厳しい要件を満たしたお客様のみのサービスとはなりますが、税務調査のリスクを下げ、経営者が本業に専念できる環境を整えるうえで非常に有効な手段です。
6.まとめ ― 日常の準備が最大の防御
税務調査は突然やってくるものではなく、経営内容や申告状況を踏まえたうえで選定されています。日常から帳簿や証憑を整備し、疑義が出やすい項目(交際費・福利厚生費・在宅関連費用など)を明確にしておくことで、調査当日も落ち着いて対応できます。税理士とコミュニケーションを密に取り、定期的に経理処理を見直すことこそが、税務調査対策の最も確実な方法です。薬局専門税理士として、私はこれからも経営者の皆さまが不安なく本業に専念できるよう、数字の面からサポートしていきたいと考えています。

