北海道の薬局事情 ― 地域医療を支える現場のリアル
- ichikawa53
- 2025年9月25日
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薬局専門税理士として全国の薬局経営者さまからお話を伺う中で、北海道の薬局経営には独特の課題があると強く感じています。日本一の面積を誇る北海道は、地域によって人口密度・交通インフラ・医療機関の分布が大きく異なります。こうした地理的特性が、薬局経営にもさまざまな影響を与えています。
1.人材確保が一層難しい
北海道ほどの広大な地域になると、薬剤師や事務スタッフの確保が首都圏に比べて圧倒的に難しくなります。特に道北・道東エリアのような過疎地域では、最寄りの薬学部を卒業した学生が都市部へ就職してしまうケースも多く、地元で薬剤師を確保するハードルが上がっています。求人広告を出しても応募が少なく、人材紹介会社経由で高額な紹介料を支払っている薬局も珍しくありません。こうした状況では、地域密着型の人材戦略がより重要になります。例えば、地元出身の薬剤師に奨学金返済サポートや住宅補助を提供するなど、長く働ける環境づくりが求められています。
2.医療機関の減少と売上確保の難しさ
過疎地域に行けば行くほど、医療機関自体が減少しています。病院が統廃合されると門前薬局の処方箋枚数が急減し、経営に大きな影響を及ぼします。また、高齢化や人口減少が進む地域では、患者数が安定せず、売上確保が年々厳しくなる傾向があります。こうした環境下では、調剤報酬だけに依存しない経営が必要です。OTC(一般用医薬品)の販売強化や在宅医療への積極的な取り組み、健康相談会や地域イベントとの連携など、地域住民・地域医療従事者との接点を増やすことが、長期的な安定に影響します。
3.M&Aに対する考え方の違い
東京都内などの都市部では、薬局M&A市場が活発で、希望者も多く、比較的高値での売却が期待できます。しかし北海道では、買い手不足や地域特性により条件交渉が難航するケースが多く見られます。一方で、北海道の経営者の方々からお話を伺うと、単なる金銭的な利益よりも「地域医療を守りたい」「自分が築いた薬局を誰かに引き継いでほしい」という思いを優先される方が多い印象があります。これは薬局経営者としての誇りであり、地域医療に対する強い責任感の表れでもあります。M&Aを考える際も、「譲渡後の地域医療維持」という視点が重要なテーマとなったケースを何度か経験しました。
4.地域密着型の経営戦略がカギ
北海道の薬局経営においては、都会型のビジネスモデルをそのまま持ち込むのではなく、地域密着型の経営戦略を構築することが不可欠です。例えば、以下のような取り組みが効果的です。
在宅医療・訪問薬剤管理の強化:病院が遠い地域ほど在宅医療のニーズが高まっています。
ICT・クラウド会計の導入:遠隔地でもスムーズに経営管理ができるようにするためのDX化が、コスト削減・業務効率化に直結します。
地域連携イベントの活用:薬剤師が地域住民に顔を知ってもらうことで、信頼関係が築かれ、処方箋以外の相談も増えていきます。
税理士としては、こうした取り組みに合わせた資金繰り・補助金・節税対策を提案することが重要だと感じています。
5.まとめ ― 「地域医療を守る」という使命
北海道の薬局経営者の多くは、地域医療を守るという強い使命感を持っています。これは都市部の薬局経営とは一線を画す特徴です。今後も人口減少・高齢化は続き、医療機関の統廃合や薬局再編が進むことが予想されます。こうした中で、薬局が地域医療の拠点として存在し続けるためには、経営者自身が先を見据えた準備を行う必要があります。薬局専門税理士として、私も経営者の皆さまと一緒に地域医療の未来を考え、数字の面からサポートしていきたいと考えています。

