開業当初の薬局経営者が押さえておきたい節税の基本
- ichikawa53
- 8月11日
- 読了時間: 3分

開業から数年は、薬局経営者にとって資金繰りの安定と利益の最大化が重要です。その中で「節税」は欠かせないテーマですが、やりすぎると金融機関からの評価低下や税務リスクに直結します。ここでは、薬局経営者が押さえておきたい節税の基本5つを紹介します。
1.青色申告の承認申請書を忘れずに提出する
基本的な手続きですが、青色申告の承認申請書は必ず出しておきましょう。個人事業主であれば最大65万円の青色申告特別控除が受けられ、法人の場合もさまざまな節税策の要件となることが多い制度です。すぐに提出期限が来るため、特に法人登記から薬局開業まで時間がある場合は忘れずに届け出る必要があります。
2.経費の正しい計上と開業費の活用
節税の基本は、事業に関係する支出を正しく経費として計上することです。薬局の場合、医薬品や消耗品の仕入れ、レセプトコンピュータ使用料、広告宣伝費、給与・社会保険料などが代表例です。さらに、開業準備の段階で発生した費用も「開業費」として資産計上し、税法に規定されているタイミングで経費化できます。内装工事、什器購入、開業前の打ち合わせ交通費などが該当するため、開業前の領収書も必ず保管しておくことが大切です。
3.小規模企業共済と倒産防止共済の活用
将来の資金確保と節税を両立できる制度として、小規模企業共済と倒産防止共済は有効です。
小規模企業共済:掛金全額が所得控除。廃業・退職時に退職金のように受け取れる。
倒産防止共済:取引先倒産時に資金を借りられる制度で、掛金全額が損金算入可能。
いずれも長期的な積立で効果が出ますが、解約時の課税や資金拘束には注意が必要です。
4.法人化による税率の最適化
個人事業では所得税率が最大45%、住民税と合わせると55%に達する場合があります。一方、法人税率は中小企業であれば実効税率約30%程度に抑えられます。一定以上の利益が見込める場合は、法人化によって税負担を軽減し、役員報酬設定による所得分散も可能になります。ただし、法人化により社会保険への加入が義務化されるため、負担増とのバランスを見極める必要があります。
5.やりすぎる節税は危険
節税は事業を健全に成長させるための手段であり、目的化すると本末転倒です。過剰に経費を計上して利益を減らすと、金融機関の融資審査で「利益が出ていない会社」と見られ、運転資金や設備資金の借入が難しくなります。さらに、税務調査で否認されるリスクも高まり、追徴課税・加算税・延滞税といった余計な出費につながります。特に薬局は社会保険・医療機関との取引など公的な信用性が求められるため、「健全な利益を残しつつ税負担をコントロールする」という姿勢が経営者には欠かせません。
まとめ
薬局経営者にとっての節税は、「合法かつ計画的に行うこと」が何より重要です。青色申告の承認申請書、開業費の整理、共済制度の活用、法人化の検討など、早めの準備が効果を左右します。そして、節税のゴールは税額を減らすことではなく、事業を長く安定させることです。目先の税金だけにとらわれず、将来の経営基盤づくりと並行して取り組みましょう。


