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調剤薬局の資金繰りが苦しい…レセプト入金までのタイムラグ前提で「運転資金はいくら必要?」

  • 3 時間前
  • 読了時間: 7分

「利益は出ているはずなのに、なぜかお金が残らない」調剤薬局の経営者の方から、こうしたご相談を受けることがあります。

特に、開局したばかりの薬局や、在宅・面対応を広げていこうとしている薬局、多店舗展開を進めている薬局では、損益以上に資金繰りが重要になります。

薬局は、売上が立ったからといって、すぐに現金が入ってくる業態ではありません。レセプトによる入金までにはタイムラグがありますし、その一方で、給与、家賃、借入返済、薬剤の仕入代金などは先に出ていきます。

つまり、調剤薬局経営では、利益が出ていること資金が回ることは別問題です。ここを曖昧にしたまま経営していると、ある日突然、「支払いができない」という事態に至ることがあります。


なぜ調剤薬局は黒字でも資金繰りが苦しくなるのか

薬局経営では、損益計算書だけ見ていても安心できません。なぜなら、損益計算書は「いつ売上が計上されたか」「いつ費用になったか」は見えても、いつお金が入ってきて、いつ出ていくかまでは分からないからです。

たとえば、レセプト請求にかかる売上は計上されていても、入金は後になります。一方で、人件費や家賃は毎月ほぼ決まって出ていきますし、薬剤の仕入れも支払日が来れば現金が必要です。

薬局経営は、ある意味で、「先に払うものが多いのに、入ってくるのは後」という構造を抱えています。

このため、帳簿上は利益が出ていても、現実には資金が足りない、ということが起こります。特に薬価の高い処方が増えた時期や、在宅を強化して人件費が先行している時期は、このズレが大きくなりやすいです。


支払いサイトを延ばしても、それだけでは解決しない

以前、資金繰りが悪化した際に、通常の2か月サイトから3か月サイトへ、薬剤の支払い期限を延ばしてしのいだ会社がありました。

この対応自体は、状況によってはあり得ます。一時的に手元資金を厚くするという意味では、確かに効果があるからです。

ただし、問題はその後です。

本来、支払いサイトを延ばしたのであれば、その間に「何が原因で資金繰りが苦しくなったのか」「今後、毎月どれくらい資金が増減するのか」を把握し、是正していかなければいけません。

ところが、実際には、資金改善策も打たず、資金予測表も作らず、そのまま長年放置されてしまうケースがあります。

そうすると、見かけ上は預金残高があるように見えても、その中には将来支払うべき仕入代金の原資が含まれています。つまり、自由に使ってよいお金ではないのです。

コロナ禍のような外部要因で業績が落ちたとき、この「本当は残しておくべき1か月分の資金」が少しずつ食われていき、最後に一気に資金繰りが悪化する。こうした流れは、実務上、十分あり得る話です。


2か月サイトと3か月サイトでは、資金の見え方が変わる

2か月サイトであれば、比較的、入ってきた金額の範囲内で支払いを調整しやすい面があります。もちろん楽だという意味ではありませんが、少なくとも資金の流れはまだ追いやすいです。

一方で、3か月サイトになると話が変わります。

売上が高く、処方薬が大量に必要だった月があったとします。その時期の薬剤仕入れ代金は、レセプト入金があった日よりも、さらに1か月遅れて支払うことになります。

すると、預金残高だけ見ている経営者の感覚では、「今月は思ったよりお金が残っている」と見えてしまうことがあります。

しかし実際には、それは単なる余剰資金ではありません。過去に売上を作るために使った仕入の支払いが、まだ後ろに控えているだけです。

ここを勘違いすると危険です。見かけの預金残高に安心してしまい、本来残しておくべきお金に手をつけてしまうからです。


苦しいときほど、残すべきお金に手をつけてしまう

経営が苦しくなったとき、人は理屈通りには動けません。

本来であれば、3か月サイトで生まれた1か月分の厚みは、将来の支払いに備えて確保しておくべきものです。しかし、売上が落ちる、想定外の支出が出る、借入返済が重い、そんな状況になると、どうしてもその資金に手をつけたくなります。

これは単なる精神論ではなく、人間として自然な弱さでもあります。

だからこそ、資金繰りは「気をつけましょう」で済ませるものではありません。仕組みとして見える化しておくことが必要です。

社長が現場に入っておらず、資金の動きを肌感覚でつかめていない。どんぶり勘定で、月末の残高だけを見てなんとなく安心している。このような状態だと、資金繰り悪化はかなりの確率で後手に回ります。


調剤薬局の運転資金はいくら必要なのか

では、調剤薬局の運転資金は、どれくらい必要なのでしょうか。

ここで注意したいのは、「固定費の何か月分あれば大丈夫」といった雑な見方だけでは足りない、ということです。

もちろん目安として固定費何か月分という考え方はあります。ただ、薬局はそれだけでは読み切れません。

なぜなら、必要運転資金は、次のような要素で大きく変わるからです。


運転資金の必要額を左右する要素

  • レセプト入金のタイムラグ

  • 薬剤仕入の支払サイト

  • 給与支給日

  • 家賃やその他経費の支払日

  • 借入返済日

  • 在宅対応の有無

  • 面対応による在庫負担

  • 高額薬剤の処方の多寡

つまり、必要運転資金は一般論ではなく、その薬局の実際の入出金の山と谷から考えなければいけません。



必要運転資金は「月次CFの最も深い谷」で考える

実務的には、月次キャッシュフローを作成し、最も資金が薄くなる“谷”がどこかを見ることが大切です。

そして、その最も深い谷を埋められるだけの資金を、必要運転資金として考えていくのが基本です。

見かけの預金残高ではなく、支払日ベースで考える。ここが非常に重要です。

「今、口座にお金があるか」ではなく、「この先の支払日に耐えられるか」という視点で見る必要があります。


まず把握すべきは「いつ、いくら動くのか」

もし3か月サイトや特殊な支払いサイクルを採用しているのであれば、最低限、次の2点は把握しなければいけません。

1.いつのタイミングでお金がどれくらい動くのか

入金日と支払日がズレる薬局経営では、月末残高だけを見ても実態は分かりません。レセプト入金日、薬剤仕入の支払日、給与支払日、借入返済日などを時系列で並べて確認することが大切です。

2.余剰資金がどのように増減するのか

今ある預金のうち、どこまでが本当に自由に使えるお金なのか。どこから先は、将来の支払いに備えて残しておくべきお金なのか。ここを見誤ると、資金繰りは一気に苦しくなります。


資金不足が見えたときの打ち手は、早く動くほど多い

月次資金繰り表を作れば、数か月先の谷を先回りして確認できます。そして、資金不足が見えた場合の打ち手も、早く動けば選択肢があります。

まずは現状把握をする

最初にやるべきは、感覚ではなく、資金繰り表で現状を把握することです。どの月に、いくら不足しそうなのか。それが見えなければ、対策も打てません。

不要不急の支出や投資を見直す

資金が苦しいときには、まず出ていくお金を点検する必要があります。設備投資や採用、広告宣伝なども、今このタイミングで本当に必要かを見直す余地があります。

在庫や仕入を適正化する

薬局では、在庫の持ち方が資金繰りに直結します。もちろん欠品は避けるべきですが、必要以上に在庫を抱えていないかは確認したいところです。

役員貸付や私的流用がないか確認する

会社のお金と個人のお金の境目が曖昧になっていると、資金繰りは読みづらくなります。どんぶり勘定になっている場合、まずはこの点の整理が必要です。

金融機関への相談や資金調達を早めに検討する

本当に大事なのは、支払いができなくなってから動くのではなく、谷が見えた時点で動くことです。早い段階であれば、借入や返済条件の見直しなど、まだ打てる手が残っています。


まとめ|見かけの預金残高ではなく、支払日ベースで考える

調剤薬局の資金繰りは、単に「利益が出ているかどうか」では判断できません。レセプト入金までのタイムラグがあり、さらに薬剤の支払いサイトや借入返済などが重なるため、黒字でもお金が足りなくなることは十分に起こります。

特に、支払いサイトを延ばしている場合は要注意です。その結果として見えている預金残高の中には、本当は将来の支払い原資にすぎないお金が含まれていることがあります。

だからこそ必要なのは、どんぶり勘定ではなく、月次キャッシュフローの谷を可視化し、その谷を埋めるだけの運転資金を把握することです。

「今、口座にいくらあるか」ではなく、「この先、支払日ベースで見て資金が足りるか」で考える。

これが、薬局の資金繰りを守る第一歩だと思います。

 
 
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